自由旅クリエイター/ライター にじねこMiiのブログ

なりゆきまかせの自由旅が好きなライター。元バックパッカーで今は2児の母。人生を今よりちょっとだけ楽しくしてくれるモノが好き。Web媒体で旅や地域の魅力を発信したり、取材記事を書いてます。お仕事も随時募集中♪

こっそりおしえる「裏旅」~【栃木・湯西川温泉】ボランティアでミニかまくらの絶景をつくる旅~

栃木の山あいの温泉地で体験した、忘れられない「裏旅」がある。

 

ボランティアでかまくらの絶景」をつくる旅だ。

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「裏旅」というのは、私が勝手に名づけた。いわゆる「正攻法の旅」じゃない、ちょっと切り口を変えて楽しむ旅。

 

何年も前の話なので、今でも同じ体験ができるかは分からないのだが、日光の山あいに湯西川温泉という温泉地がある。冬は深い雪に覆われる地域だ。毎年冬になるとここで「湯西川かまくら祭」が開かれる。

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河原につくられた無数のミニかまくらに火がともされたその幻想的な光景を、テレビで観た人もいるかもしれない。今年は残念ながら中止となってしまったが、「死ぬまでに一度は見たい絶景」に選ばれたこともあるそうだ。

 

5,6年前、そのかまくらづくりのボランティアとして、1泊2日で湯西川を訪れたことがある。どうやってその情報にたどり着いたかは思い出せないが、ボランティア募集のページには「(日帰りではなく)2日間の場合は宿泊先を用意します。」とあった。

 

かまくらづくりのボランティアなんて、ちょっとおもしろそうだ。千葉から行くのだから当然泊まりになるだろう。宿泊先を用意してくれるなら、ボランティアついでに旅気分も味わえるかも?いや、むしろそっちが目的かな?笑


一瞬、「子どもたちもまだ小学校低学年だし、置いていけないよなあ。泊まりで行くなんて無理かも。」と思ったが、主人に相談したところ、快くOKして休みを調整してくれた。(ダメ元で言ってみるもんですね!)

 


友人も一緒に行くことになり、当日朝、千葉を出発。各駅停車に揺られ、「湯西川温泉駅」に降り立つ。そしてそこからさらにバスに揺られること30分。

 

 

ボランティアは日帰りの人も含め、10人くらいいただろうか。私たちの任務は、ただひたすら川べりにミニかまくらをつくること。

 

こういうことにはつい没頭してしまうタチだ。無心になれるのがいい。河原でひたすらバケツに雪を詰め、中身をあけて、ろうそくを置く穴をつくる。

 

体を久しぶりに動かしたのも気持ちがよかったが、なにより「観光客を迎える側になる」というのは初めてのこと。どんなイベントも、たくさんの人たちのこういう地道な努力でできあがってるんだな、という当たり前のことに気づく。


夕暮れどき、私たちがつくったミニかまくらに火が灯されると、あたりは幻想的な雰囲気に包まれた。

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早くからこの山あいの集落までやってきていた観光客が、それを見て一斉に感動の声をあげる。「わざわざここまで来て、かまくらをつくった甲斐があった!」と思えた瞬間だ。

 
この日の私たちの任務は終了。ここからは旅人としての時間だ。かまくら祭のイベントに立ち寄り、地元の小さな酒屋をのぞいたあと、近くの小料理屋で夕飯をとることにした。

 

タイミングよく手に入ったという生の「鹿刺し」 、それにちょっと怖いもの見たさで「サンショウウオのから揚げ」なんてメニューも頼んでみる。地元の人たちがいつもこういった料理を食べているわけではないだろう。でもこの豊かな山と川に囲まれた、湯西川ならではの自然の恵みなんだと思う。

 

鹿刺しは柔らかくて臭みもまったくなく、噛みしめるほどにおいしかった。

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サンショウウオはよくみるとなかなかグロテスクだけど、さほど抵抗感もなくペロリといただいた。何しろこっちは疲れていて、いい感じに酔いが回っている。おかみさんとも話に花が咲き、とても楽しい夜を過ごした。

 

その土地ならではのものをいただき、出会った人たちと楽しい時間を共有する。まさに旅の醍醐味だ。たとえ同じものを東京で食べたとしても、こんなに心には残らないだろう。実際にその土地まで足を運び、人や自然などすべてをひっくるめてそこでいただくからこその感動なのだと思う。

 

翌日も午前中はボランティアだったが、ろうそくを片付けるくらいでそんなに時間はかからなかった。

 

空いた時間にスノーシュートレッキングも満喫した。初めてのスノーシュー(かんじきのような、雪の上を歩くもの)はちょっと歩きにくかったけど、ガイドさんに連れられて林の中へ。青い空を木の合間から見上げながら、静かな雪の林の中を歩くのは気持ちがいい。

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小高い山の上から、湯西川を見下ろす。こんこんと木を叩くキツツキを初めて目の前で見たときは感動した。だってテレビでしか観たことないもの!

 

何事も経験に勝るものはないのだと思う。

 

以来、千葉から遠く離れた湯西川温泉は、私にとってはちょっと特別な場所になった。祭りを開催する人たちの「地元愛」を感じたり、アウトドアを満喫したり、おいしい料理と会話で楽しい時間を過ごしたりと、とても心に残る時間だったのだ。(そして2年後に再訪し、おかみさんのお店にも行ってきた。)

 

観光客としてというよりも(部外者ではあるけど)観光客を迎える側として、イベントの裏方も楽しみながら、旅気分も満喫した「裏旅」。ボランティアとして行くのだから、もちろんそこはしっかりやらないといけない。(もとの動機が不純だから、あんまり大っぴらにこの方法をすすめるのもよくないだろうなぁ、きっと(笑)。)でもこういう旅の方法も、ひとつの形としてありじゃないかと思う。

 

これは何年も前の話だし、こういう宿泊ボランティアの募集が来年以降あるかどうかも分からない。でももし機会があれば、いつもの旅とはちょっと違った「裏旅」をぜひいかがだろうか?

 

読んでいただきありがとうございます。

 

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