ぶらりと自転車で都内にでかけた。わが家は千葉県の松戸にあるので、江戸川を渡ればすぐ東京だ。
どこに行くとは決めてないけど、とりあえず東京スカイツリー方面を目指す。「東向島」という看板を見つけ、道を逸れて京島エリアに寄ることにした。ここは昔からの長屋が今も残る街で、古い建物をリノベーションしたカフェが点在する。
ぶらりと周辺をまわってみる。以前訪れたいくつかの店は閉まっていた。このコロナ禍で店を閉めてしまったのか、たんにまだ開いてないだけなのかは分からない。
「キラキラ橘商店街」の中を走っていたら、ちょっと目立つお店を見つけた。コッペパン屋さんだった。「ハト屋パン店」とある。外観と看板はずいぶんレトロだ。
お昼にはちょっと早いけど、パンもおいしそうだし小休止。あんバター200円を買って、店先で頬張る。
それがね。思いのほかおいしかったんですよ!噛みしめて食べるような素朴なパンに、あんことバターのゴールデンな組み合わせがすごく合っていて、自転車をこいだあとの体にはちょうどいい糖分と塩分。
もう少し食べたくなってしまった。よく見るとイートインもできるみたいだし、中で追いコッペしちゃおう!とコロッケサンド飲み物付450円を注文。
聞けばもともと大正から続くコッペパン屋さんで、数年前に先代のご主人が亡くなり、店が途絶えかけたのだが、現オーナーさんが買い取って「ハト屋パン店」の名前を継いだのだという。
スタッフの女性と話すうちに、そういえば前にTVでこのお店を観た記憶が蘇ってきた。まさかのめぐり合わせで立ち寄ることになるなんて。
カウンターでいろんな話を聞いてる間にも、お客さんが入れ替わり立ち替わり店先を訪れ、パンを買っていく。
「取材っすか?」私がペンを手にしているのを見て、若者が声をかけてきた。「いや、違うんですけど、偶然買ったらおいしかったので、いろいろ話聞いてるんですよ。」「うまいっすよね〜、ここのパン。」どうやら常連さんらしい。
知らない人との会話も、行き当たりばったりのひとり旅ではよくあることだ。こういう小さな、でもちょっとこころがあたたかくなるような出来事が重なることで、その旅や街が自分にとって特別なものになるんだと思う。
それにしてもさっきの男の子、見るからにイマドキの若者風で、気軽に話しかけてくるようなタイプには見えなかったけどな〜と思うと、ちょっと微笑ましかった。
つい長居してしまったけど、気がつけばもう1時をまわっている。そろそろ行かないと、ほかの場所に寄れなくなってしまう。
コロッケサンド、おいしかった。
再び自転車をこぎ始めて、浅草方面へ。途中こんな有名人に遭遇!
看板を頼りに走っていたら、見覚えのある道に出た。この年末年始は、記事の取材で何度か浅草を訪れた。そのときに食べた肉まんがまた食べたくなった。新仲見世通りにある「セキネ」というお店だ。
前回は行列ができていた。そのときはたまたま通りかかり、並んでる人に聞いたら「にくまんとシューマイといえば昔からここよ。たまに浅草に帰ってくると、絶対ここで買って帰るの。」というので、私もすぐさま後ろに並んだのだ。
店先で食べるにくまん260円はほんとのアツアツで、中のあんも肉肉しくておいしい。肉汁がじわっと皮にしみてくる。
浅草でゆっくりできないのが残念だが、この頃には上野をゴールにしようと決めていた。暗闇の中、慣れない道を自転車で走りたくないので、日没までには家に帰るつもりだ。
途中、下谷神社という素敵な神社を見つけたので、お参りがてら立ち寄る。福豆300円をゲットし、再び自転車に。
ようやく上野駅に到着。ささやかな達成感。いつの間にかもう3時だ。帰るのにぎりぎりの時間だけど、ここまで来てそのまま帰るのは悔しすぎる。せっかくだから「みはし」であんみつでも食べて帰ろう。
ここは私が学生の頃からあるお店だ。懐かしい。こんな時間でもけっこうお客さんがいる。みんなオヤツの時間なんだね。
シンプルにあんみつ570円をいただいた。あんこの甘さがしみる。
外に出ると、もう街には夕暮れの気配が漂っていた。来たときの記憶を辿りながら、なんとか日没直前に家へと帰り着く。
走行距離52キロ。気ままな自転車旅。
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