もうかれこれ15,16年も前になるが、私はホテルのウェディングプランナーをやっていた。出産を機に辞めたのだが、5年間くらいやっていたと思う。
ちょうど私がこの仕事をやっていた時期にウェディングプランナーのドラマが流行ったこともあり、一時はわりと人気の職業だった。今日はそんな一見華やかそうに見える(らしい)この仕事の裏話をしてみたいと思う。
ウェディングプランナーはオンナの世界⁉︎
私はもともとホテル内でベルスタッフ(お客様を部屋などに案内する係)をやっていたのだが、社内の異動でブライダルセクションに行くことになった。私が異動した当時、ブライダルセクションは「墓場」と呼ばれており、ホテル内では恐れられている存在だった。
つまりこういうイメージだったのだ。
↓↓
①オンナの世界で陰湿そう。
②愛想がなく、お高くとまっている。
③お局さまがいる。
たしかにプランナーは圧倒的に女性が多かったので、事務所内はちょっと女子校チックだったかもしれない。別にお高くとまってたわけではないが、他セクションとは完全に別フロアだったし、何となく独特な雰囲気があったのは否定できない。そしてお局さまもたしかにいた。彼女はいつも「忙しい忙しい!」が口癖だった。
でもだからといってべつに陰湿な世界ではなかったし、むしろそのときはけっこうあっけらかんとした女子が多かった気がする。
じつはメチャメチャ地味な仕事
ウェディングプランナーってわりと華やかなイメージかもしれないが、じつはものすごく地味な仕事だ。中心となるのはお客様との打ち合わせだが、その裏にはいろんな手配や事務処理がある。
ウェディングのセクションは、ホテル内のほぼ全ての部署やテナントと関わりがあるといっても過言ではない。衣装室、写真室、花屋さん、キッチン、パティシエ、宴会スタッフ、美容室などなど。お花とかケーキといった専門的な打ち合わせは専門スタッフがやるけど、結婚式や披露宴の全体像を把握してとりまとめるのはプランナーだ。
ゆえに細かい仕事も多い。たとえば席次表。どんな人がどのあたりのテーブルに座るとか、出席者の名前の漢字が間違ってないかとか、ひととおり目を通すし、そのほかに司会者さんや引出物の手配もある。打ち合わせがある時以外は、ほとんどそういった手配や細かい事務処理に追われていることが多かった。
披露宴にずっとはりついてるなんてあり得ない!
ドラマなどで、ウェディングプランナーがお客様の結婚式や披露宴にずっとはりついてるシーンを見ると、「そんなことあり得ない!」と思ってしまう。
もちろん自分が担当して、何度も打ち合わせを重ねてきたふたりだから、当日の晴れ姿を見たいし、合間をみて挨拶にも行く。結婚式や披露宴を後ろからこっそり覗きにいったりもする。
でもずっとはりついてる時間なんて、実際はない。
結婚式はだいたい土日が多い。そして土日はこれから式を挙げるお客様との打ち合わせもけっこう入る。さらにいえば、結婚式場を探しに来る新規のお客様も多いのだ。土日はいつも走り回っているし、その合間に事務処理もしなければならない。
全然華やかでもなんでもなく、けっこうハードな仕事なのだ。
お客様と担当者は似たもの同士??
ウェディングプランナーとして働いていた頃、仲間うちでよく言われていたのは「お客さんと担当者って似るよね」ってこと。つまり大らかなプランナーには大らかなお客さん、細かいプランナーには細かいお客さん、という具合に。
当時お客様との打ち合わせに関しては、主にふたつの方法があり、結婚式場によって大体どちらかだった。
①お客様が成約した場合、最初に対応したプランナーが結婚式当日まで担当するパターン。
②新規担当のプランナーと打ち合わせ担当プランナーが、完全に別々になっているパターン。
うちのホテルは①のパターンだったので、もし自分が新規でご案内したお客様が正式に申し込んでくれた場合、打ち合わせを担当するのは当然私ということになる。
お客様によっては「このホテルで結婚式をしたい!」という強い気持ちがあって申し込んでくれる人もいるけど、大体の人はいくつかの式場候補の中から、どれかを選ぶパターンだと思う。そんなとき、最初に対応したプランナーの印象も、案外決め手のひとつになるらしい。
この人は話しやすいとか、共通点があるとか、馬が合いそうとか。だから「類は友を呼ぶ」じゃないけど、担当者はいつの間にか、自分と似たタイプのお客さんを引き寄せていたりするみたいなのだ。もちろんすべてにあてはまるわけではないけど、「あのお客さんは〇〇さん(プランナー)っぽいよね〜。」なんて言ってると、案外当たってたりするからおもしろい。
チームワークが大事
ドラマなどの中ではスポットがあたりやすいウェディングプランナーだが、はっきり言って裏方仕事だ。結婚式は本当にいろんな人たちの手があってこそできるものだし、プランナーは結婚式の全体像をつくり上げるための橋渡し役、まとめ役にすぎない。そして当日の結婚式を最高の日にするためには、やはり他セクションとの事前の情報共有が欠かせない。ちょっとした抜けが、当日とんでもないことを引き起こすことだってあるからだ。
当日は信じて任せる
さっきも言ったことだが、結婚式当日、プランナーはふたりにずっとついていることはできない。私がいたホテルでは、披露宴を取りしきるのはキャプテン(当日の披露宴の配膳スタッフのリーダー)と司会者だった。キャプテンと司会者の連携はかなり大事だ。会の進行状況や料理の出し具合などを見ながら、披露宴を進めていく。そして花嫁さんのお世話をする介添えさんも、陰で支える大事な役割だ。
みんなが思うことはただひとつ。素敵な結婚式と披露宴にすること。当日ウェディングプランナーは彼らを信じて任せるのみ。だからこそ、それまでのしっかりとした準備がとても大事なのだ。
当日新郎新婦の晴れ姿を見ると、担当者としてグッと胸にくるものがある。そして「末永くお幸せにね」と心から思う。たくさんの笑顔にも出会える。そう考えると、ウェディングプランナーっていい仕事だなと思う。