今日はセルシオ事件について語ろう。
私が若かりし日にやらかしてしまった、とある事件である。
当時わたしは、企業向けのお弁当を作って配達する会社で働いていた。大学卒業後に就職したのがここだったのだ。働き始めて丸3年。これを一区切りに会社を辞め、ワーキングホリデーでニュージーランドに行こうと決めた時期である。
セルシオ事件は海外渡航の準備をしながら、残り少ない会社での日々を過ごしていたさなかに起きた。
ある日、会社にお願いして、パスポートの申請場所まで連れていってもらうことになった。この会社では、市内に散らばる取引先にお弁当を届けるため、いくつものコースを組んでいて、何人もの人が手分けして配達していた。
直接パスポートセンターまで行くことはできないため、まず初めにAさんのクルマで中継地点まで行き、そこからBさんのクルマに乗せてもらって目的地へと行くことになった。
さて中継地点で待っていると、そこにBさんが現れた。Bさんはまだ配達途中で、弁当を両手に抱えながら「そこにクルマ停まってるから、乗って待ってて〜。」とわたしに言い残して去っていった。
Bさんが教えてくれたあたりには、やけに立派なクルマが1台停まっている。セルシオだった。
「こんなすごいクルマ、ウチの会社にあったかな?」と思いましたよ、もちろん。
でも察しのいい方はもうお分かりですね。そう。かすかな疑問を抱きつつも、皆さんのご期待どおり、私はそのセルシオに乗りこんでしまったのだ。これまた都合のいいことに、ドアのカギが開いてたんですね〜。
座り心地のいい助手席で、車内の立派な設備のあれこれを眺めながら待っていると、運転席がガチャっと開いた。
一瞬見つめ合う、見知らぬ者同士。なんだか気まずい…。
そしてその男の人は戸惑った様子でこうわたしに言ったのだった。
「あのぉ…、これ私のクルマなんですけど…。」
ですよねーーーー汗汗汗!
「ごめんなさーーい、間違えましたー!!」と言いながら、あわてて飛び出る私。その後のことはもうまったく覚えていない。
これがセルシオ事件のあらましである。
今書いていても冷や汗が出る。
そんなわたしも、今では2児の母である。