こんにちは。
今日はマンションの中庭にある、一本のクスノキについての話。
わが家があるのは5年前に買った中古マンションの1階。小さな専用庭からマンションの中庭へと続く扉を出ると、そこには一本の大きなクスノキがそびえている。樹齢何年かは分からないけど、青々とした葉を茂らせて、枝を大空に向かっていっぱいに伸ばすクスノキ。
巣があるのか、時折ヤマバトの声が中庭に響く。
このマンションを買おうと思った決め手はいくつかあったけど、私がこの大木を一目で気に入ったことも密かな理由の一つだった。
リビングのカーテンを開けると、目の前にはいつもこの木があって、その存在は私の気持ちを穏やかにしてくれる。葉っぱに降りかかる雨の音も、風に揺れて大きくざわめく葉ずれの音も、私の心には優しく響く。
そんなクスノキの枝が、2年ほど前に大きく切り払われたことがあった。
クスノキで部屋が日陰になったり、木の下に落ちる鳥の糞がひどいからという理由で、枝を切ってほしいという要望があったらしい。
ちょうど仕事が休みだったこの日、クスノキの枝が次から次へと切られていくのを目の当たりにして、私の心は泣いていた。
あとに残されたのは、枝がすっかりなくなって不格好になった悲しげなクスノキ。
そのあとしばらくは、見るたびに私も悲しかった。
でもそんなある時、切られたところから小さな枝が伸びているのを見つけた。
それは最初、頼りなさげな存在だったけど、気づけばいつの間にか、また元のようなクスノキになっていた。不格好だった形もすっかり整っている。
今日久しぶりに外に出てクスノキを見上げたら、冬の青空に大きく枝を広げ、やっぱり変わらず、私の心を優しくなでてくれた。
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