自由旅クリエイター/ライター にじねこMiiのブログ

なりゆきまかせの自由旅が好きなライター。元バックパッカーで今は2児の母。人生を今よりちょっとだけ楽しくしてくれるモノが好き。Web媒体で旅や地域の魅力を発信したり、取材記事を書いてます。お仕事も随時募集中♪

【非公認】「千葉市動物公園」をマニアックに楽しむ方法

 

千葉市動物公園は千葉の子どもたちに親しまれてきたローカルな動物園。

 

今回は筆者の独断と偏見で、ちょっと斜めの角度からお楽しみポイントを選び、マニアックなコース仕立てにしてご紹介したいと思います。

 

※なおコース通りにまわっても、筆者と同じ体験ができるかは保証の限りではありません。

 

ではさっそく行きましょう!

 

1.千葉モノレール「チーター号」

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千葉市民の足として親しまれている「千葉モノレール」。このように上からぶら下がるタイプのものは「懸垂型」といい、現在国内では千葉、湘南、広島の3か所で運行しています。「地に足がついてない状態」を体験したい方は、ぜひ「千葉モノレール」へ!

 

「千葉」駅から「動物公園」駅までは12分。7月に「千葉市動物公園」にチーターがやってきたこともあり、なんと現在チーター号が走行中!ヒョウ柄でもゼブラ柄でもなく、チーター柄ですよ♡♡運よくチーター号に乗れたら、気分が上がること間違いありません!

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ちなみに筆者が乗ったのは、残念ながらこちらのマリーンズ号でした(;'∀')。

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こちら「千葉モノレール」のHPです↓↓↓

https://chiba-monorail.co.jp/

 

2.お出迎えファミリー

さて「動物公園」駅でモノレールを降りると、構内の「あるもの」に驚かされます。それがこちら↓↓↓

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そう。以前2本足で立つと話題になった、あのレッサーパンダ風太くんとそのファミリー(の人形)です!じつは風太くんは、ここ千葉市動物公園にいるのです。

 

4頭でそろってお出迎え♪体と顔のギャップがちょっぴり怖いです(^◇^;)。知らずにやってきた人は、その独特な空気感に一瞬ひるむことでしょう。(筆者がそうでした。)

 

3.チーターのポスター

今年7月に千葉市動物公園にやってきたチーター。なにしろモノレールの柄にもなるくらいですからね。当然今イチオシの動物でしょう。貼ってある3枚組のチーターポスターからも、並々ならぬ気合が感じられます。

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チーター号とポスターに洗脳され、動物園に入るなりチーターのもとへと駆けつけた人も多いはず!

 

4.【モンキーゾーン】ヒマそうなゴリラ

さていよいよ動物園へ。まっすぐチーターのもとへは駆けつけません。手前の動物たちから手堅くいきましょう。

 

まずぜひ会いたいのが「モンキーゾーン」にいるニシゴリラのローラ。どうやら自分を人間と思っているんだとか。SNSにあげられる写真も妙に人間臭く、ときに哀愁を漂わせています。口笛が上手な43歳。

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普段やることもあまりないのか(そりゃないですね(;'∀'))、草をブチブチとちぎっては口に運んだり投げたり・・。ニンゲンたちからは、口々に「ヒマそうだね~。」という言葉をかけられ、ちょっと不憫なローラ。まあ声をかける人間からすれば、ある意味うらやましさの裏返しだったりして・・?

 

5.【鳥類・水系ゾーン】動くハシビロコウ

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ハシビロコウといえば、大きな体に大きなくちばし。そしてずっと見ていてもピクリとも動かない魔訶不思議な鳥。途中からだんだん「あれ?もしかして作りものかな?」と思い始めたことのある人も1人や2人ではないでしょう。その独特にして圧倒的な存在感は、唯一無二といえます。

 

しかしそんな「動かない鳥」が動いていたら・・?勝手なものでニンゲンは動揺するのです。予想に反してウロウロと歩き回るしずかちゃんをみたときの筆者もそうでした。

 

小さな子どもたちから届く「しずかちゃ~ん!」という熱い声援。しかしそんな言葉もどこ吹く風で、わが道を行くしずかちゃんです。決して急がず(急げず?)、そ~っと抜き足差し足で歩き回るしずかちゃん。その絶妙なリズム感と間合いがやけにおかしく、ニンゲンの静かな笑いを誘いました。

 

ちなみに隣のおりにいたハシビロコウのじっとくん。こちらは人間たちの期待に見事に応えた「ザ・ハシビロコウで、見ている間はピクリともしませんでした。

 

6.【平原ゾーン】不機嫌なチータ

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いよいよおまちかねのチーター展示場へ。この時はチーター3兄弟がスタンバイ。まだ7月に公開されたばかりとあってやはり人気者。そのりりしい姿にみんなくぎづけです!

 

筆者の隣にいたおじさんが、なぜかチーターを言葉と態度で挑発。うち1頭がその挑発に乗り(?)おじさんを威嚇しにきました。

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チーターって不機嫌な姿もかっこいい!

 

ゆくゆくは展示場内で疑似餌を動かして、チーターがそれを全速力で追いかける姿を公開予定とのこと。擬似餌だなんて、やり方がちょっと卑怯な気もしますが、走る姿こそチーターの真骨頂。ぜひ見てみたいものです。

 

7.【平原ゾーン】ブチハイエナの素顔

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さてこちら、チーターと同じ新顔さん。ブチハイエナのイトゥバちゃんです。獲物をかすめとり、死肉を食らう。そんな邪悪なイメージを一身に背負うイトゥバちゃんは、じつは愛嬌があってとってもキュートとても「平原の掃除屋」とは思えません。

 

あおむけでゴロゴロしたり、木の棒を嚙み砕く姿は、まるで近所のイヌそのもの!きっとイトゥバちゃんが日本のワンちゃんたちと遊んでいても、ハイエナが一匹混じってるなんて誰も気づかないでしょう(笑)。

 

はたしてこれが動物園育ちだからなのか、それともハイエナがもともとこういう動物なのか、あるいはイトゥバちゃんの性格ゆえかは分かりませんが、そばにはこんな立て看板が・・。

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なんと!「ハイエナ地位向上委員会」!

 

というわけで、イトゥバちゃんの可愛さに骨抜きにされた筆者は、ハイエナのイメージアップに貢献するため、さっそくあおむけゴロゴロ動画をTwitterにアップするのでした。

 

さあ、皆さんもぜひご一緒に!

 

8.【小動物ゾーン】レッサーパンダ風太くんファミリー

一時期、かわいい立ち姿がお茶の間の話題をさらった「風太くん」は、今も元気に千葉市動物公園で暮らしていました。↓↓

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2003年生まれとのことなので、ざっと17歳。人間でいうと80歳くらいだとか。まだまだ元気に動き回っていましたが、ちょっとキレがないかな・・?なお、風太くんの跡取り息子「クウタくん」は、やぐらに上って無邪気に遊んでいました。(一応パパです。)

 

ところでここにはけっこうな数のレッサーパンダがいるんですが、みんな風太くんファミリーなんでしょうか・・?と思ったらこんな家系図が貼ってありました。

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どうやら風太くん一家は、かなりのビッグファミリーのようです。

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9.さいごに

筆者が動物園を訪れたのはBREW at the ZOO」というイベントの最終日(9月の最終日曜日)でした。いろんな種類のクラフトビールが楽しめるとあって、たくさんの家族連れでにぎわう会場。もちろん筆者もダブルダッチのライブパフォーマンスをみながら、ビールを堪能しました。

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動物園でいろんなクラフトビールが楽しめるなんて最高じゃありませんか♫

 

※イベントが好評だったため、10月第1,2週の土日(3、4、10、11日)の追加開催が決まったそうです。(ライブパフォーマンスはありません。)

 

さあ、あなたもクラフトビールを楽しみつつ、ちょっとマニアックな動物園の旅へ! 

 

こちらは「千葉市動物公園」のHPです↓↓↓

https://www.city.chiba.jp/zoo/

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

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アンジェロの目に映るものーハンガリーー

今朝の新聞で目にした「障害」についての記事。それは1人で世界一周をしたという、車いすの青年に関するものだった。旅の道中大変さもありながらも、行く先々で出会った親切な人たちとの記憶が自分にとって宝ものになっている、という内容だった。

 

心の奥底に眠っていた20年前の記憶が、ふと蘇る。

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ヨーロッパ放浪旅も後半に差しかかった頃、私はハンガリーブダペストを訪れた。安宿で2日ほど過ごしたのだが、そこで出会った数人のバックパッカーと一緒に過ごしたのだ。

 

その中の一人は、盲導犬を連れた30代くらいのアメリカ人男性で、名前をアンジェロといった。ジェシーというアメリカの若者がアンジェロをさり気なくサポートしていたので、てっきり2人は一緒に旅をしているのだと思っていた。

 

しかしほかの数人も含め、一緒に街に出かけたりごはんを食べに行ったりする中で、この2人はどうやらそれぞれ一人旅をしている最中だと知る。道中出会って、今はたまたま一緒に旅をしているらしい。この先きっとどこかで、またそれぞれの行き先へと向かうのだろう。

 

そうなると驚くべきはアンジェロの行動力だ。だって彼はまったく目が見えないにもかかわらず、一人で盲導犬と旅をしているのだ。しかも海外を!

 

日本ではとても考えられないと思った。私の中の「障害者」のイメージは、人との接触をできるだけ避けて、どちらかというと内にこもっている感じ。身近に障害のある人がいなかった分、私も先入観や固定観念にかなりとらわれていたかもしれない。でも少なくとも、障害を持った人が1人で旅をするなんて、まったく想像もできないことだった。

 

そんな私の心の衝撃を知るよしもない、当のアンジェロはとても社交的で積極的。大勢でいるときもまるっきり臆することがなく、フットワークも軽いのだ。(みんなで出かけたとき、彼は相棒の犬を宿において、杖で出かけていたと思う。)そしてアンジェロはそんな自由な旅を楽しんでいるように見えた。

 

そばにいるジェシーのサポートもごく自然で、アンジェロを「障害者」として特別扱いする感じはまったくない。どこまでもさり気なく手を貸すといった雰囲気。

 

 

アンジェロの臆することない行動力にしろ、ジェシーのさりげないサポートにしろ、これが彼らのもともとの性格によるものなのか、それともアメリカ社会の成熟によるものなのかは分からない。

 

でも少なくとも、日本との大きな違いを感じずにはいられなかったし、私にはとてもあるべき姿のように思えた。近い将来、日本でもこんな光景が当たり前になったら素敵だなあ、と思った出来事だったのだ。

 

その夜、宿のTVでみんなで映画を観た。その映像は見えていないはずなのに、アンジェロはみんなと一緒に楽しそうに笑っている。その光景がとても不思議だった。

 

でもきっとアンジェロには「見えて」いたんだと思う。彼が旅で出会ってきた誰かの顔も美しい景色も、彼の心にはちゃんと映っていたのかもしれない。

 

読んでいただきありがとうございます。

 

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私は今も「旅」をしてる

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そういえば私には「旅行に行く」という感覚がほとんどない。いつも口から出るのは「旅にでる」。独身のときならまだしも、中学生の子がふたりいる母になってもこうなのだから、我ながら笑ってしまう。

 

「旅行」「旅」。このふたつがどう違うのか、って聞かれたら困るけど、でも少なくとも私に「旅行」という言葉がなじまないことは確かだ。この言葉を使うのは、せいぜい「家族旅行」のときくらいだろうか。

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「旅」という言葉には、自由な響きがあるから好きだ。常にふわふわと漂っているような。都内でも、海外でも、日帰りでも、私はどこかに出かけるときはだいたい旅と思っている。大まかな行き先だけ決めて、あとは行き当たりばったり。

 

そもそも「どこかに出かけよう!」と思い立つのはいつも直前だし、行き先も最後の最後に変わったりする。行く本人ですらよく分からないのだから、私がどこに行ったのか家族の誰も知らないなんてことはざらだ。これは明らかに「旅行」じゃない。

 

「旅行」という言葉にはなんとなく、計画性とかきっちり感が感じられる。

 

その最たるものは「ツアー旅行」だ。今はオプショナルツアーも充実しているだろうし、自由度もずいぶん高いのかもしれないけど、基本的にはみんなで同じところをまわるイメージ。でも自分の性分として、そもそも団体行動自体に興味がない。それに誰かに連れられて行った場所というのは、まったく印象に残らないのだ。

 

「旅」の場合、行き当たりばったりな分、ムダも多い。電車やバスの乗り継ぎがうまくいかなくて長時間待つことになったり、街で迷子になったり・・。でも半面、耳寄りな情報を地元の人に教えてもらったり、予期せぬおもしろいことに出会うこともある。

 

スムーズにいかなくて一見ムダに思えることも、すべてひっくるめて楽しむ。この「何があるか分からない」っていうのが「旅」の醍醐味なのかもしれない。

 

 

 

 

ヨーロッパの旅の始まりにーイギリスー

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ロンドンに到着したのは前の晩遅く。シンガポールでの滞在のあと、いよいよイギリスの地に降り立ったのだ。待ち望んでいたヨーロッパの旅がついに始まる!

 

しかし行き当たりばったりの旅ゆえ、空港に着いた時点で宿泊先も決まっていなかった。インフォメーションで宿を探してもらうが、条件に見合う手頃な宿はすでに満室。結局、自分の想定をはるかに超える値段のホテルに泊まることになった。

 

これからヨーロッパで長い旅を始めようという私には手痛い出費だったが、すでに時間も遅いし背に腹はかえられない。

 

人生初のロンドン。ようやく市内のホテルに着いたはいいけれど、長いフライトで疲れ、またすでに暗くて外の景色が見えないこともあり、憧れのヨーロッパに着いたという感動はまったくなかった。

 

その日はただぐったりとホテルのベッドで眠りにつく。

 

翌朝、思いがけず早くに目が覚めた。街はもう動き出している気配だ。部屋のカーテンを思いっきり全開にする。

 

目に飛び込んできたのはロンドンの日常の光景。窓の下には長い歴史を刻んだ、重厚感あふれる建物がひしめき合う。そしてその中をせわしなく行き交うのは、いままさに仕事に向かおうとスーツに身を包んだビジネスマンたち。

 

過去と現在が奇妙に交差する光景を目の当たりにして、なんだか胸が熱くなった。積み重ねられてきた歴史が脈々と受け継がれながらも、人々の日常の中にごく当たり前に溶け込んでいることに不思議な感動を覚える。

 

そうだ。

 

ここはロンドンなのだ。

 

ついにこれからヨーロッパの旅が始まるんだ、と心の中でつぶやいた旅立ちの朝。

 

こころはどこかに

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気持ちのいい
梅雨の晴れ間

 

こんな日は
思いっきり窓を
開けっぱなしにして
心地よい風を
思う存分感じよう

 

高い空を横切る
飛行機を見るたび

 

私のこころは
どこか遠いところへと
飛んでいってしまう

 

ソウルのおばちゃんとヤクルトー韓国ー

知らない街に行くと、あてもなくぶらぶらと歩くのが好きだ。この時もソウルで路地裏探検をしながら、ガイドブックでみた「汗蒸幕(ハンジュンマク)」を探していた。「汗蒸幕」というのは韓国の伝統的なサウナで、どうやらここでアカスリもできるらしい。韓国に行ったら一度はやってみたいと思っていた。

 

訪れたのは20年前。ソウルの街中の看板は当たり前だけどハングルであふれていて、お目当ての店があってもなかなか見つけられないこともしばしばだった。漢字や英語ならまだどんな店なのか推測のしようもあるが、ハングルとなるとお手上げだ。文字を逆さまに書かれたとしても、多分私には分からないだろう。

 

その時もたどり着いたらラッキーくらいの気持ちで歩いていた。市場のような細い路地裏に迷い込み、韓国語が飛び交う雑踏を奥へ奥へと進む。初めて嗅ぐ匂い。見なれない食材が吊るされた店の軒先。こういうカオスな雰囲気が旅を実感させてくれる。

 

この時は運よく、お目当ての汗蒸幕に行き着くことができた。生まれて初めてのアカスリの店は、どうやら観光客がよく来るようなところではなかったようだ。店内も地元感満載で、外国人らしき人など一人もいない。

 

中に入ると湯船があり、隣接してアカスリエリアらしきところがある。きっとその時の私は伝統の汗蒸幕も体験したんだろうけど、アカスリの印象があまりにも強烈すぎて、もうそれしか覚えていない。

 

ベッドに横になると、アカスリおばちゃんのなすがまま。もちろんこちらはすべてをさらけ出している。とにかく全身くまなく、表も裏もスリスリされたと思う。最初は恥ずかしい気持ちしかなかったが、だんだん開き直り、最後はもう「何でもこい!」って感じ。

 

終わったときには身も心も清々しかった。おばちゃんはただひたすらアカスリの任務遂行に忙しかったし、会話らしい会話をした覚えもないのだけど、終わる頃にはおばちゃんに密かに親近感すら覚えていた。何しろおばちゃんはもう私のすべてを知っているからね。

 

常連らしきおばちゃんたちのネイティブ感あふれる韓国語の会話を聞きながら、最後に受付に立ち寄る。

 

すると受付おばちゃんが私に何かを手渡してくれた。

 

ヤクルト!

 

え?なんでヤクルト??

 

頭の中がまたカオスになりながらも、一瞬で飲み干す。アカスリのあとにはサイコーのドリンクだ!ちょっと物足りないところがまたいい。

 

そのヤクルトが、いつも最後にお客に渡しているものなのか、それともたまたまその時にあったからくれたものなのかは分からない。でも少なくとも、私が外国人であることは分かっていたはず。

 

その私にさりげなくヤクルトをくれたのがなんだか嬉しくて、やっぱり来るならこういうディープなとこよね!とあらためて思ったのだった。

 

 

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シチリアの彼女ーイタリアー

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その日シチリア島に降り立ったのは午後9時半。長い旅だった。

 

前夜にドイツ・ミュンヘンを発ってからほぼ24時間。ようやくシチリアカターニャに着いた時には心底ほっとした。迎えに来てくれた友人ジゼラの車に乗って、彼女の地元である内陸部の小さな街までさらに1時間半。疲れ切った体に連続のカーブがこたえる。ようやくたどり着いたジゼラの家では、お母さんがごはんを作って待っていてくれた。

 

ジゼラとは9か月前、オーストラリアの現地ツアーで知り合い、意気投合したのだ。そして今、このシチリアの小さな丘の上の街で再会を果たしていることが不思議だった。これから私はジゼラの家に1週間滞在するのだ。

 

辺鄙な片田舎の街ゆえ、道で会うのはみんなジゼラの知り合いで、そのたびに紹介されるのだがとても覚えられない。一方、相手はみんなすぐに私を覚えてくれた。何しろ私はこの街に来た初めての「アジア人」らしいから。

 

1週間の滞在中、私はジゼラやその友人たちと一緒にいろんなことをやった。自転車で隣町までサイクリングに行ったり、ドライブに出かけたり、街の小さなカフェで丸いパンにのせたレモンのグラニータ(シャーベット)を食べたりもした。

 

そんななかでも印象的だったのは、街のフェスティバルだった。それはどうやらサン・セバスティアーノという守護聖人のお祭りで、数日間かけて盛大に行われた。夜11時くらいから教会に行ったり、コンサートやダンスタイムがあったり、馬のパレードが街を練り歩いたりと日本のお祭りとはまったくべつのものだ。

 

サン・セバスチアーノをのせたお神輿にみんなぞろぞろとついていき、各家でワインとビスコッティをもらう。こんなに地方色、宗教色の濃いお祭りに参加したのは、後にも先にもこの時だけだ。どこもすごい人混みで、街のみんなはこのお祭りをとても誇りに思っているようだった。

 

ジゼラはふだんシチリアの別の街に暮らしながら学生をしていた。この時はちょうど私の訪問と地元のお祭りが重なったこともあり、私を実家に連れていってくれたのだと思う。私が滞在している間も、彼女は毎日必ず自分の勉強の時間をとっていたし、いつも努力家だった。だって彼女には「ジャーナリストになりたい」っていう夢があったから。

 

シチリア滞在も終わりにさしかかったある日、私はジゼラとお母さん、そしておばさんの4人で海水浴に行った。山から海へと下っていく途中、目に飛び込んできたのはどこまでも真っ青な海。ジゼラと出会ったオーストラリアの海はどこまでも明るく、活気に満ちた印象だったが、シチリアの海はもっと落ち着いた静けさをたたえていた。

 

そのビーチは日本人がくるような場所ではなく、みんな物珍しげに私を見ていたのを覚えている。見知らぬおじさんが海に入る私にたずねてきた。

 

「何かカンツォーネを知ってるかい?」

 

「もちろん!」といって私は「オーソレミオ」と「サンタルチア」をイタリアの海で思いきり歌った。周りは大いにうけ、私も久々にお腹の底から日本語で歌っていい気持ちだった。

 

どこまでも広がる濃いブルーの海を目の前に、大きなサンドイッチとトロピカルフルーツのグラニータを食べる。照りつける太陽の下で感じる潮風が心地よい。

 

ジゼラとふたりだけになったとき、ふと彼女が母についてぼそりと話し始めた。

 

「母は私がいくら何かでベストを尽くしても、決してそれには満足しない人なの。」

 

いつもいつも、母はさらにその上を求める。そして私はもうそれにうんざりなのだ、と彼女は少し疲れた表情で言った。突然の告白に私は返す言葉がなかった。この数日間ではまったく気づかなかったことだ。

 

しっかり者で努力家のジゼラは、母の期待に応えなければという気持ちに常に追われてきたのだろう。そしてその真面目な性格ゆえ、自分を追い込んでしまっていたのかもしれない。

 

そういえば少し前、人口2,000人の小さなこの街を「素敵なところだね!」と私が言った時、ふと彼女は呟いたのだ。「もちろんこの街のことは大好きだけど、私はこの街から出たいの。小さな街だからね。みんながお互いのことを知ってる。」

 

強くて、頭がよくて、凛としていて、同性から見ても魅力的なジゼラ。でもそれは本当は、彼女が懸命に作り上げてきた虚像だったのかもしれない。

 

幸いにして、彼女の父はいつも味方でいてくれるという。「成績がどうであろうと、お前がHappyならお父さんはHappyだよ。」と。その言葉がこれまで彼女を支えてきたのだろう。そして多分これからも。

 

その日の帰り道、カーブ越しに見た水平線は来たときよりももっと深く、濃いブルーの色をたたえていた。